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人を殺してはいけない理由

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伊坂幸太郎著、『マリアビートル』読みました。

マリアビートルとは
「てんとう虫」の意で、英語のレディバグ、レディビートルから
来ているようで、レディは聖母マリア様のことをさすらしい。
マリア様の七つの悲しみを背負って飛んでいく。だから、てんとう虫は
レディビートルと呼ばれている。

劇中の引用であるが、へぇと思う部分だったのでメモ。

個人的に印象に残ったのは、登場人物の一人、王子の

戦争と死刑が許されるにもかかわらず、どうして人を

殺してはいけないのかというひねくれた質問に対して、とある塾講師の答えが

また斬新だった。

 

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『殺人を犯したら、国家が困るんだよ』

『たとえば、自分は明日、誰かにころされるかもしれない、となったら、人間は経済活動に従事できない。そもそも、所有権を保護しなくては経済は成り立たないんだ。そうだろう?自分で買ったものが自分の物と保障されないんだったら、誰もお金を使わない。そもそも、お金だって、自分の物とは言えなくなってしまう。そして、『命』は自分の所有しているもっとも重要なものだ。そう考えれば、まずは、命を保護しなくては、少なくとも命を保護するふりをしなくては、経済活動が止まってしまうんだ。だからね、国家が禁止事項を作ったんだよ。殺人禁止のルールは、その一つだ。重要なものの一つ。そう考えれば、戦争と死刑が許されるのは簡単だ。それは、国家の都合で、行われるものだからだよ。国家が問題なし、と認めたものだけが許される。そこに倫理は関係ない。』

劇中より引用
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おもわず、なるほどと思ってしまった。

物事にはいろいろな考え方があるな、と。

 

新幹線内で交錯する、群像劇。

この手のモノは、伊坂作品としては久しぶりのように感じた。

最後に物語がひとつになるすっきり感が個人的に好きなことと

贔屓の作家ということもあり、楽しめた。